拝啓 夏川草介先生
こんにちは。はじめまして。
先生の新著『新章 神様のカルテ』を読ませていただいた者です。
これまで様々な本を読んできましたが、作者の方にお手紙を書いたことがなく、また書きたいとも思ったことがなかったため、今回浮かんできたこの思いをどうすればよいのか思案していました。
そこで誠に勝手ではありますが、もし先生のお目に留まればと思い、ここに書き記しておきます。
大学に入ってからあまり心身のゆとりがなく、高校まで常にそばにあった本から離れていました。
最近になってやっと読書を思う存分できる状態になり、早速読んだ本がこれでした。
この度の『新章 神様のカルテ』は一言で表すと、これだから読書は楽しいと、改めて思い出させてくれた一冊でした。
処女作から変わらない、目を閉じればそこに見えるかのような信濃の景色を表す字の連なり。この『神様のカルテ』シリーズを読み続けているうちに、長野の気候と花と日本酒にちょっとだけ詳しくなった気がします。
また、会話の一つ一つが機知に富んでいて、夏川先生も本当に読書の好きなお方なのだということを感じます。
その会話の中でも、読み終えた後、澱のように心に残った言葉がいくつかありました。
「"真面目とはね、真剣勝負の意味だよ"」
「大丈夫でないことも、全部含めてきっと大丈夫です」
「生きることは権利ではない。義務です」
こうやって並べて書くと普通に聞こえますが、生と死の間で全力を尽くす人の発する言葉だからこその重みを感じました。
そして前々から何度も出てくる「気概」という言葉。
まさに栗原一止という人物は気概のある方ですね。
周りの医師たちも、己のやるべきことへの一生懸命さが美しく、心打たれます。
御嶽荘に帰れば、家族を始めとした温かい人達が待っている。
栗原先生も晴れて班長、砂山先生もご結婚、進藤先生もまた家族3人で暮らせるようになり、今まで気になっていた一人ひとりの物語が、今回で一区切りついたような気がします。
あと気になるのは男爵の正体かな?
大学病院の後の栗原先生はまた本庄病院に戻るのでしょうか。
あまり期待しすぎて、夏川先生の重荷や負担になってはいけないとは思いつつも、"引きの栗原"の続きを考えてしまいます。
一度ページをめくればそこには涙があり、笑顔があり、人の優しさがある。
忘れかけていた何かを思い出させてくれる本でした。
これから先つらいことがあっても、この本があれば乗り越えていけそうです。
『神様のカルテ』シリーズを読み続けてきてよかった。
夏川先生も栗原先生と同じ医師で、きっとお辛いこともたくさんあるでしょう。
しかしこの本を世の中に出してくださって、本当に感謝している人がいるのだということを忘れないでください。
本当にありがとうございました。
寒さ厳しき折、どうぞご自愛ください。
敬具